2012年11月17日土曜日

「トップ高の下位層の生徒の成績を上げられない」ということについて

難しい問題ですな!このことについてはそう思うわけです。

「トップ高の下位層の生徒の成績を上げられない・・・それで悩んでいる」という話しを小耳に挟んだとき、ふと、この本の内容がまた頭をよぎりました。

その本とは
いつも紹介している
『日本のメリトクラシー 構造と心性』(著者 竹内洋 東京大学出版会 19957月初版)です。

この本の中の、こうなる構造について説明した、下記の記載があります。以前の載せたことがある記載ですが。

以下抜粋。
『(中略)日本では加熱と冷却がトラック間に作動するのではなく、トラック内部に生じる。トラックが学校単位になっているから、トップの高校においても成績下位の者には押し下げ効果によって冷却が作動する。押し下げ効果とは、絶対水準で学力が高くても所属集団が学力が高い集団で相対的に下位になることによってクール・アウトされてしまうことである。逆に二番手、三番手の高校であろうとも成績上位者には押し上げ効果が生じ加熱が作動する。押し上げ効果とは絶対水準の学力がかならずしも高くなくとも所属集団内での相対的位置では高くなり、加熱効果が作動することである。所謂フロッグ・ポンド効果(鶏口となるも牛後となるなかれ)である。』

例えば、トップの高校だからみんながみんなモチベーション高く加熱していて、下位の高校だと逆にモチベーションが低く冷却している、というわけでなくトラック内部(それぞれのレベルの高校の高校単位の中で)で加熱や冷却が作動しているということなんですよね。
そして、私が思うには、上位の高校になればなるほど、高校に入るまでは当然上位にいるわけですから、トラック内部で下位層になるという経験もなかったわけで、それが高校に入ったら下位層というはじめての状況になったとしたら、冷却という負の方向に引っ張られることは当然のこととして、さらにその引っ張られ方はそれ以外のレベルの高校の人間と比較した時に強いのかもしれませんね。(上位の高校になればなるほど、集団の相対的なレベルが高いので、順位も上げずらいし、これだけやればこれくらい上がるだろうという先が見えずらいですし、などなど負に引っ張られる要素は多いと思うわけです。)そうなると根も深いですね。

といった感じで、
こういった構造があるんですよね。だから難しいんですよ!


これに関連して、私の体験も書かせていただこうかと思います。
私も、トップの高校の出身(当時で毎年東大に10数名合格するくらいのレベルの学校ですね、私の時代は東大に16名合格しました。)なんですが、覚えている限りで書きますと
テストの順位は、高1の冬で、大体学年で400名くらいいて、確か50番くらい、高2の一学期で80番くらいと、めちゃくちゃ勉強を頑張ったっていう記憶はないのですが、それなりに勉強をしていてそれなりに上位にいました。確か高2の夏前の面接のときに、文系に行きたいという話しをしたら、先生から「一橋大を狙うくらいの意識で行け」といわれたくらいなので、できた方なんだと思います。
そこからが問題なのですが、だんだん、勉強をする意味というのがわからなくなり、高2の夏明けから全然勉強をしなくなりました。本当に全くしなくなった・・・
トップ高校だけに、一気に成績は落ちますよね。気がついたら高3に入っていて、もうリカバーができないくらいになってしまっているんですよね。ちょっとやったくらいでは、成績が上がらない・・・・もう何をやっていいのかわからなくなっている。周りは徐々に受験に向けてアクセルを踏み出している・・・やばいと。でも自分は成績がよかったときのイメージがあるので、自分はできると思っている。自分より下の人間に抜かれている現実や成績が落ちてしまっている今の現実を認めようとしない。「やればできるのにやらないからできないだけ。だから今の自分は自分じゃないだよ」って心の中で自分に言いながら何もしない。何もしないからさらに負のループみたいな感じになって、もうどうしようもない状態。勉強をしない理由を別のことをやっているから、みたいな感じで自分で勝手に逃げ道を作って逃避行動をして・・・
まだ、やる気が10のうち2でもあれば、何とかなるのかもしれませんが、もう0になっているので、どうしようもない。とにかく逃避行動を取り続けて行く、そんなことをしながらさらに冷却していく・・・・最悪な状況ですよね。
今思えば、高3の段階でリカバーできないくらい悪いというわけでもなかったと思うわけです。確かに、自分の成績のピーク時と比較すれば順位はガタ落ちで、下の方にいってしまいましたが、それは自分の学校内でのことであり、トップ高校だったからあたかもすごく悪くなったように見えますが、相対的に見れば別に全然悪くはないわけです。でも上記でいう「冷却」が作動してしまったんだと思うんですよね。
あの時に、もう一度体制を立て直して、気持ちを切り替えて前の進めば全然リカバーできたのではと思うし、そうすればよかったのにそれができなかったんですね。
(なんだかんだ言っても、まだ高校生ですから、気持ちも弱いところがあるんですよね。自分で立て直すことができないわけですよ・・・)

モチベーションの観点から追加していうと、トップ高でも下位層に入ると、トラック内部(トップ高校の内部)での評価として、できない奴という目で見られるようになります。当然、先生も期待しなくなります。要は周囲からは負のイメージで見られるようになるわけです。(特にトップ高になればなるほど、その人その人に対しての評価が「成績の良し悪し」といったことに影響を受けやすく、「成績の良し悪し」といったことが評価指標に占めるウエイトも大きいと思いますので、それだけに成績が下位層になるということはその人の評価に大きな影を落とすことになると思います。)本人も感覚的に「ダメだと思われている、期待されていない」っていうことは実感として感じとれますので、どんどん自分自身も萎縮してくるし、当然、やる気も出ないし、バックギアに入りますよね。(ただ、トップ高校なので、世間的に見れば、下位層といってもそこまで成績は悪くないんでしょうけど。外と比較してもっと大きな括りで俯瞰して見れたらいいのですが、こういったことはどうしても、所属集団であるトラック内部の中で現象として起こってしまうんですよね。そして長い時間一緒に生活をおくる所属集団の中でこのような状況が続けば誰でも冷却していきますよね。)
こういった要因もあると思います。

いずれにしても、トップ高の下位層には押し下げ効果によって冷却が作動するわけです。だから中々成績が上げられないっていうのはそういった構造からというのも理由の1つかもしれません。
※押し下げ効果によっての冷却はトップ高のみで起こることではなく、どのレベルの高校にも起こることですが、今回はトップ高について、トップ高の特性も含めて言及しています。
ちなみに余談ですが、2・6・2の法則~
人が集団を構成すると2・6・2の法則(優秀な人が2割、普通の人が6割、パッとしない人が2割)が成り立つと言われており、本当にどこにも起こりうることなんですよね。しかも下の2割をカットしても、普通だった6割の中の一部がまたパッとしない2割を構成するようになるわけで・・・。

では、それでも状況を好転させる、成績を上げさせるためにはどうすればいいのか
自分の経験からいうと、
自分の能力・可能性を絶対的に信じてくれて、いまある現実を受け止めて、その上で気持ちを切り替えて前に進ませてくれるようなサポートがあればよかったのにと思います。
自分の能力・可能性を信じてくれているということが大前提で、そういう自分の今までの状況を理解して受け止めてくれたうえで(さらに言うならば、自分を客観視させてくれる→大きな括りで全体を俯瞰してみせてくれて、世の中全体としての位置づけはこうで、客観的にはこうで、この状態だとこうなる、そして将来はこうだとか、客観的にはこう見えるとかなどなど、本人が理解するまでは時間がかかる根気のいることですが、そういった自分を客観視させてくれる・自分を冷静な状態に戻してくれるアプローチも有効だったかと思います)、厳しくも温かいサポートがあれば、また自分も立ち上がって再度戦うことができたのではないかなって思います。今思えば、先生も周囲の大人も、全然自分の立場に立ってくれていなかったなって思うわけですよ。人によっては、よき理解者ずらをしているけど、全然理解していなかったなと。
もっと本気で関わってくれたのであれば、最初は相当に反発すると思いますが、絶対に状況は好転したかと思いますね。とにかく、自分の今までの状況、思い、今の置かれている状況、将来への思いっていうものを洗いざらい話させてくれて、それを理解して真正面から受け止めて、そして本気が関わってくれる人がいたら・・・って思いますね。そうしたら、気持ちを切り替えて前に進んでいったような気がします。
さらにいうならば、その時点での学力レベルを洗いざらい、いろいろな角度から把握しようとしてくれて、結果、把握し、それを前提に、例えば「今からだと、この参考書とこの参考書をこれだけの期間にこれくらいやれば、必ずここまでのレベルに上がる、だから信じてやれ」って具体的に方法論を提示し、納得しなかったとしても、納得するまで向き合い、やると決めさせて、やり切るまで徹底的に関わってくれていたら、もうそれは最高の結果だったような気がしますね。
(このアプローチはトップ高の生徒だけではなく、どのレベルの生徒に対しての対応でも言えることですが)


冷却しているわけですからモチベーションも10段階でいえばかなり低いか0なわけですよね。一旦動きをとめてしまったものに対して、それをまた戦うモードにもっていかなければいけないわけで。
従って、個人個人にフォーカスして、「きめ細かい対応をして気持ちの面で変化を与えるような関わり+具体的な方法論の提示+信じて徹底的に関わる」といったことをすることが求められると本当に思いますね。
トップ高の生徒であればプライドもある、その中で下位層になってしまったという挫折感という傷口は大きい、それなりに頭も良い、バカじゃないから単純ではない、小手先のきれいごとなんか見透かされる等々、だから一筋縄ではいかないと思いますので、二番手以下の高校の生徒の関わる以上にパワーがかかると思います。相当なパワーがかかると思います。でも、それくらいの本気度がないと生徒は変わらない・動かないのではないかと思います。

それだけのことをやる覚悟があるのであれば、関わっていただき、こういう状況にある生徒を好転させて欲しいと思いますね。


「トップ高の下位層の生徒の成績を上げられない・・・」という話しを聞いたので、それに関連して思ったことをとりとめなく書いてみました。

0 件のコメント:

コメントを投稿