2012年6月18日月曜日

高校について③高校のレベルの変化を中心に(静岡の例)

高校について①で、高校入試選抜で学校の序列や学校そのものが変わってしまった等を書きましたが、静岡県について言えば、そういう中では、入試選抜にあまり影響を受けていない地域といえます。ということは過去と比較しやすいということです。
その静岡県を今回は例にとって、高校のレベルの経年変化を中心に、その学校に在籍する学生のレベルの経年変化、さらには大学のレベルの経年変化という点について書きたいと思います。

最近、私立H高校の校長先生と広報担当の先生と話しをしていました。
その中で、私が感じていたことを現場の先生方も感じているのかということを聞きたくなって「最近、浜松北とか静岡高校とかの入学する生徒のレベルって昔と比べて下がってますよね?」と聞いてみた。答えはYES。本当に下がっているとのこと!やはりそうだったのか。実際の教育現場でのそういう実感があるんだなと。

まずはデータを見てください。

データ①(1990年高校入学)


データ②(2009年高校入学)


データ③

データの数字は微妙に異なるところもあるかもしれませんが、データは参考として見ていただき、大体の全体感を理解していただければと思います。

静岡市内の公立高校を序列化すると、トップは静岡高、次に静岡東高、その次に静岡市立高という感じになります。圧倒的に公立優位の県ですので、上位層が私立高校に流れるということはほぼありえない、そういった環境です。



データを見ての感想として
1】まずは、各高校のレベルの低下です。
データ①、②にあるボーダーというのは、1990年であれば出文テスト、2009年であれば学力調査テストのボーダーラインです。(250点満点)
ボーダーを見てみると、1990年→2009年でボーダーは各高校で軒並み下がっています。これはテストが難しくなったからではなく、単に、それぞれの学校を受験する受験生の学力レベルが下がっているということです。(ゆとり教育で問題の質や難易度は下がっているという話しも聞くので、その状況の中での、このボーダーの下がり方が異常だと思います。)
しかも1990年と2009年の15歳人口を比較すると2009年は1990年の6割くらいに生徒数は減っているのに、学校毎の定員の減り方は甘い。ということは、1990年では静岡東高へ入学していた生徒が2009年では静岡高へ入学しているということになります。そして相対的にレベルが下がっていく。トップ校が下がれば、二番手はさらに下がる、三番手はもっと下がるということになる。
(例えば1990年に静岡高の定員が405名だとすると、人口の減少を考えれば2009年の静岡高の定員は405名×6割≒240名程度であるのが妥当だと思います。)
1971年生まれ~1974年生まれ→団塊ジュニア(第二次ベビーブーム)

2】各高校のレベルは軒並み低下しているのに旧帝大+一橋・東工大への進学数は静岡高を除いて増えている。
これは、上位大学が相対的に入りやすくなっているということになるのではないかと思います。1990年代後半以前であれば、トップ校の生徒(要は基礎学力がある生徒)が努力して入学する大学が旧帝大だったように思いますが、今では、昔よりは手が届きやすくなったという感じがします。極端な言い方をすれば、ある程度の高校であれば、努力すれば誰もに旧帝大へいけるチャンスがあるような気がします。


3】では大学の偏差値(河合塾を参照)を見てみると、【1】【2】の現状がありながら、偏差値が下がっているどころか、基本的に上昇しています。
これは、当時よりも、大学進学を目指す下の層が増えている(母数は増え、以前ならば大学受験をしなかったような層も受験している)のでどうしても上位大学の偏差値はあがってしまうのでしょう。しかし、高校のレベルが下がり、しかも中位の高校でも旧帝大に手が届くようになっているわけですから、大学の偏差値(見せ値)は上昇していますが、昔より旧帝大に入学する生徒の学力レベルが上昇しているとはいえない(下降している)ということになるでしょう。


こういったものを見ると、
高校生に対しては、「みんなに可能性があるから、もっと自分を信じてがんばれば希望する大学へいける。みんながんばれ」と言いたい気分になります。

ただ、別の見方をすると、旧帝大がこのような状況だと思うと、大学ってなんなんだろう、大学の価値ってどこまで落ちていくんだろうって思ってしまいます。
例えば、企業の採用において大学を見て判断しようとした場合、人事の方が大学生だった頃のレベルの大学生を取ろうと思ったら、多分該当する大学の大学生であってもその中の一握りとはいわないまでも少ないでしょう。

こういう状況にも関わらず、世の中の学校は、猫も杓子も大学進学を掲げて進んでいる。みんな画一的に大学を目指そう、いい大学を目指そうとしている・・・勉強することは非常に大事なことなんですが・・・・こういう現状を見ていると、もっと社会で活きる別の力を鍛えた方がいいかもしれないと思ってしまいます。
別の力については、また別の機会に書きたいと思います。


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